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惨禍に苛まれた傷跡

惨禍に苛まれた傷跡

あの頃からか…
君の事が好きになったのは…

2年前に初めて君に出会った時
今まで知り合った人々とは違う何かを感じていた。

人々に対し心を閉ざしていた自分を変えてくれた君
いつしか大切な人へ変わりゆく

数年の時を経て、某組織の構成員として
裏稼業で生計を営んでいる

頼まれる依頼は工作が多いが、時には為政者より
国内をはじめ海外の敵対勢力の頭領や幹部等の暗殺業務も
請け負っている

今の自分には背に腹は代えられない事情があるが
全てのあの為に今は歯を食いしばって耐えがたきを偲んでいる

屋根から違和感を感じる
どうも敵の工作員…いや暗殺者が紛れているようだ
銃を屋根に向けて発砲し、暗殺者の悲鳴を聞く

まだ息をしているようだ
反撃を受ける前に刺殺し止めを刺した

暫くすると保安官が来た
本件を報告すると、敵対勢力がそろそろ本格攻撃をすると
告げられ万全な備えをするよう指示を受けた

何故自分の所属組織と警察が仲が良いかというと
それもそのはず、この組織自体、為政者の手によって作られた
秘密組織だからだ

敵対勢力と書いた組織は反政府勢力
為政者からすれば絶対に存在してはならない勢力

正直いえば、この国がどうなろうがどうでもいい
が…とはいえ為政者がいなければどのみちまともに暮らしていけない
それは100も承知だ

夕刻…反政府勢力が本格的に進攻を始めた
先程の保安官から出撃指令を受け、反政府勢力との戦闘を開始する

反政府勢力の頭領は若いらしい
聞いた話によれば自分と同い年
きっと相当の切れ者何だろうなと

前置きが長くなってしまったが、この組織自体を統治しているのは
実は自分だったりするが、もはやそんな事はどうでもよい
※現場第一主義を抱えているからもあるが…

反政府勢力は思ったよりも善戦しているように見える
頭領の的確指示や構成員の士気の高さがそれを物語っているようだ

しかしながらこちらの組織も同様に士気は高く
そう簡単にケリがつくわけではないが…

暫くすると頭領らしき人物が見えた
黒い布を被っているので詳細は分からないが
きっと幾千の戦いを経験しているのだろう

本格的な戦闘から1刻が経つ頃
ようやく頭領と自分が顔を合わす

いくら為政者側・反政府側とはいえ
元はこの国に生を受け過ごした民同士
犠牲は出来るだけ最小限に抑えなければならない

普通の国なら停戦交渉でも始めるはずだが
この国にそんな考えなどあろうはずもない

ようやく結論を見出した
互いの組織から10人を選び出し1対1で決闘する

3刻が過ぎた頃
ようやく最後の決闘が始まる

どうもお互いに頭領同士での決闘のようだ
あの頭領は切れ者だけに味方に出来れば
それに越したことはないが、期待は残念ながら不可能だ

決闘準備に掛る
自分には前述の通り大切な存在がいる

そう数年前に出会ったあの人の事だ

その人と幸せな日々を過ごすために
辛酸を舐めた日々を過ごしていたから

その後、最も辛い現実を知る事になる
夢は淡き者と実感する

いよいよ最期の決闘が始まる
あの頭領がついに黒い衣を振り払った

!?

あの頭領の正体は…
…他ならぬ大切な人だった…

「何故…」

冷徹な自分にさえ、この現実は受け入れられなかった
不条理な現実を突き付けられ、現実から目を背けたかった

数刻が過ぎた頃
頭領となっていた君が話し掛ける

「どうして…」

それは自分だって同じ
正直、君と決闘する事なんて出来ない

幸い決闘までの時間が少しではあるが残されているので
互いの取り巻きに下がってもらい、中立地帯のキャンプで
暫くの時を過ごすことにし停戦した

「久しぶりだね」

暫く黙っていると、君が話し掛けてきた

「此方こそ久しぶり」

相変わらずな感じで安堵したものの
何故お互いの組織が敵対しなければならないのか
不条理な気持ちで一杯だった

聞けば大切な人達を為政者側が虐殺…それが反政府闘争に
入る切っ掛けだったという

暫くすると君から衝撃的な言葉を聞いた
実は自分も一族が為政者側によって暗殺されていたとの事

何故…今更…

衝撃的な事実を知り、言葉に出せない憤りを覚えた

暫くして君から行動を共にして欲しいと
…もう自分にはそんな資格は無いと…

それを察知した君から
昔から変わらないよね…
でも一緒に過ごしたい気持ちは昔と変わらないよと
私もこの戦いが終わったら一緒に幸せに過ごしたいと
思っていたからと

組織が敵対関係で無ければ、
すぐにでも文字通り一緒になれるのだが
この国だけでいうならそう一筋縄にはいかない

迷っているうちにさらに数刻が過ぎゆく

どうも先程から不穏な雰囲気だ…

参った…保安官というか為政者側の側近が
今の話を聞いてしまったようだ
銃を突き付けられ…為政者側につくのか
反政府側につくのか組織の頭領としての
決断を迫られた

いずれにしても自分がこの組織に入り頭領まで
上り詰めたのは
この国に真の平和と安定、幸せを齎したかったから…
何よりも君と一緒に幸せに過ごしたかったから…

答えはもう出ていた

保安官にもう協力する事は出来ないと伝え
為政者側から反政府側に寝返った

間もなく保安官を通して為政者側に伝えられ
為政者側の親衛隊と戦闘になった

為政者側に付く組織は相当少なくなったが、
依然として強く…勝利出来るかどうかは解らない
ただ、この国にそして…何よりも君の為に
全ての不条理を乗り越え、真の意味での自由を手に入れたい

今から約8年前に出した物語版「惨禍に苛まれた傷跡」を
リメイクしてみました。
実は詩版「惨禍に苛まれた傷跡」が元になっていていますが、
後半部分は物語独自の内容に仕上げました。

今後は今までに書いた詩や新たに閃いたら新たに物語を
作ってみたいと思います♪