哀しみ(カナシミ)の夜

うっすらと浮かぶ海辺の影に
君の姿が見える

君に触れようとしても
手は全て擦り抜けていく

・・・そう、もはやこの世のヒトでは無いから・・・

あれは数日前、未曾有の惨劇に見舞われた日だった
瓦礫から見つかった傷だらけの身体・・・

・・・紛れも無い自らの身体
擦り抜けていく光と影
もはや何も手に出来ない・・・

失いの代償は余りにも大きい

耐え難き意識の薄れ・・・
数日の末に息絶え・・・
今宵に魂となってこの世を離れる

八代に消え逝く今宵に抱く想い
何時かは消え逝く宿命(サダメ)にあり
明日の明けにはあの世へと旅立ち

海辺の精が語りかける
来世の儚いひと時

一時で消え去る
仮の身体

・・・例え僅かな一時でもいいから・・・

幻となり現れる今宵だけの特別な夜
仮の身体で最愛の君(キミ)にようやく会える
抱きしめたときにようやく分かる有り難味

大切な想いは生を受けているときも
魂となった後も何一つ変わらない
それを確かめ合うように一つの答えを見出す

・・・永遠という答え・・・

哀しみから解き放たれるとき
氷離に閉ざされた深い闇(ヤミ)からも
解き放たれる

来世で再び君(キミ)と幸せな一時を
過ごせる日が来ることを願いながら
永遠に過ごす来世に魂は旅立った