死光~shi-hikari~

明ける朝に最期の知らせを悲報として耳にする
幸せとは無縁の生涯を今宵で閉じる
儚き幕引きを僅かに照らす死光が遮る

意識が遠のく微かな吐息
架の世界から届く静かな美しい旋律に導かれ
架の世界へ魂は旅立つ
この世界にはもう二度と戻れないことを知りながら
敢えて辛き道を選ばざるを得なかった悲しき心
哀愁漂う世界からもはや別れを選ぶ秋の夜

冬の景色が見える頃
魂はそっと架の日に見えた惨禍を辿り
断ち切れない未練をずっと抱き
永遠に彷徨い続ける
永遠に得られない微かな幸せと淡い幻想
一生得られない幸せに死が身に付く己の弱き心

死光が照らす荒れ果てた地に
先の惨禍で命を落とした魂が迷い込む
死光に導かれた青白い魂は
死の旋律にそっと導かれながら
微かに見える神社の祠へ御霊となって帰り逝く

張り付けられた身体に新たな魂が吹き込まれる
死の旋律が鳴り止む頃
最果てに永久に眠る古えの身体は滅び
新たな身体でこの世の終わりに蘇る
この世の終わり・・・死光が消え去る時

ありきたりの幸せなど得られる資格など無い
呪われた身体など消え去ればいい
傷だらけにしてもまだ消えぬ
死に底無い身体や心など全て消え去れればいい
生きる価値すらない
淡き期待などとうの昔に捨て去った
今残るのは全ての消滅を願う心
全てを消し去りたい
もう何もかも
もうあの時には戻れない
二度と戻れない
消えてしまいたい

死の旋律が心と身体を駆け巡る頃
消えかけていたはずの死光が再び蘇る
消える見せ掛けだけの幸せ
清く正しいとずっと信じていたこの世界
虚構に満ち溢れていた矛盾だらけの社会
裏切り裏切られの日々に見切りを付け
己自身、この世界そのものの終焉を願う
ありきたりの一生など必要無い
全てが消える頃
死光が全てを消し去り
全てに終焉を齎し
全ての終わりを告げる
全ての時がこの時、終わりを迎える
残されたのは一欠片の死光と蓮華という一厘の花