「詩」カテゴリーアーカイブ

一の刻、今日で全てが消える
二の刻、嘗てなく涼しい一日
三の刻、満ち足りない地
四の刻、失い欠ける魂に
五の刻、永遠に分かり合えない
六の刻、夜更けに全ての情が消え
七の刻、修羅と化す
八の刻、世界は滅びへと誘われる
九の刻、冷徹な雰囲気
十の刻、夕暮れに見舞う精へ
十一の刻、冬の夜に
十二の刻、今宵で全てが終わる

社の祠に迷う魂
浄化まで残り少ない
救世の志さえ今は全て消え失せる
滅びの夜は既に迫っている
今宵が全ての終わりの日
全てが終わり何も無い無の世界へ帰り行く
無に還る時、全ての刻が止まり
全ての情、魂が消え全てが無の存在となりゆく

氷の夜
凍てつく寒さに人としての生気は全て消え

朱の夜
修羅と化し氷の世界を滅し自身すら消し去る

行くあての無い魂
かつて滅ぼした世界に
未練を頂き過去世に行く
永遠に戻る術は無い事を
今漸く知る
永遠に取り残される魂に
誰も手は差し伸べず
魂が消える日をひたすら待ち続ける

闇の夜
消える術が無い魂に最早誰も期待せず

滅の夜
迷える魂が消え永遠に滅びる

聖天

赤い世界に来て早や一年
今宵はいつも赤い夜景は無く
真っ白な夜景が見渡す限り続く

すぐにある事に気付く
真っ白な世界とは…「次元の世界」

複数ある未来から良き未来を選べと
聖なる声が啓示される
あの世界への帰りを願う

祈りは届かぬと昔の古文書には書かれていた
其れなら敢えて前例を破り祈りを捧げる

暫くの時を得て真っ白な光が全身を包む
意識が薄れ赤い世界の夜景が徐々に見えなくなる

一時の眠りを得て夢の世界から目覚める
目覚めた世界は元の青い世界
一年前と何一つ変わらない世界
気が付けば大切なあの人が待っていた
一年の長き時を経ての再会
夜空を見上げ神秘的な夜景を見る

聖天と呼ばれる夜景
現世世界こそが古えの古文書に
書かれていた「聖天世界」
幸せな光が二人を包み
永遠に離れる事の無い絆を得て
今宵より永遠に幸せな一時を過ごす

赤化

彷徨う
嘗ていた世界にはもう二度と戻れない
全てが二人を引き裂いた

今いる世界
辺り一面が赤い赤化した世界
空も海も大地も全てが赤い

もう元の青い澄んだ世界には
二度と戻れない
永遠に戻れない

荒んだ赤い夕焼け
不快に満ちた狂気と隣り合わせの惨劇の深夜
消える希望と生への癒着
死と隣り合わせの恐怖
消える未来への過去への呪縛
籠の中から出る呪詛を受け
漂流していた囚われの魂は
今宵永遠に消滅する

現世と並行に存在する赤化世界
次第に自身が赤化した事に気付き
最早澄んだ青い現世に永遠に戻れない
永遠に戻れない

夢にみる元の青い世界
今の世界では異世界…平行世界
赤い光に身が蝕まれる
最早魂が浄化される事も救われる事は二度と無い

一日だけ元の世界に戻れる
微かな生への希望が芽生える
ただ一日だけでもいい
また大切な人に出会えるのなら

七月の七日の夜
また青い世界で再び出会える
あの日からずっと変わる事の無い思い
またあの穏やかで幸せな一時を過ごす

夢のような夜
夜更けが近づき幻のように消え去る
気が付けばまた赤い世界
もう二度と元の世界へ帰れない
永遠に元の世界へは戻れない

嘗夜(かつての夜)

祠に見舞う精霊に問う
生きる意味とは?

嘗ての夜は永遠(とわ)に
繁栄が許されていた
東の地ならではの思し召し

何時(いつ)しか我欲(わがよく)に囚われる
身勝手な者達が増え神は全てを見放した
在りし日の夜滅びの時を迎える

嘗ての夜に意味があったのかと
今更ながらに問い掛ける
今は最早破滅以外の選択肢は無い

消えゆく大地と微笑み
静寂がこの地を支配し終焉を迎える

蛍夜

夜桜に蛍が舞う
今宵で桜散り往くと知るや
精霊となった君へ問い掛ける

水辺に咲く花
蓮の花に導かれ
今宵魂は新たな世界へ旅立つ

蛍となり現れる君の姿を見て
惚れゆくいつしか周りを見渡せば
夕暮れの時を迎えていた

明ける日の朝
身支度を整えて新たな地へ赴く
新たな地にて君と永久に過ごしたい
そう今の地に問い掛けると
今まで澱んでいた空気が消え
輝かしい地へと変わりゆく

新たな地にて夢から覚める
気付いた時には既に君と一緒にいて
これから永久の幸せを二人で分かち合う
永遠の時がそっと二人を祝福する
今宵は七夕、晴れ渡る空を二人で見て
幸せな一時を過ごす
蛍がそっと囁いた
幸せは永遠に

未夜

未だ訪れない夜
此の地は永久(とわ)に神々しい光が降り注ぐ
彼の地は今宵初めて夜が訪れる
いつの日か、此の地も夜が訪れる事になるだろうと
伝記に記されていた

ある日、古文書に記されていた内容を見て
驚愕の事実を知る
此の地は古えの頃に呪い(まじない)により
夜が永久に訪れないように仕向けられていた事を
もう人の手では二度と戻せない事を知る

あれから数年の月日が流れ
未夜(みよ)の地での暮らしにも慣れ
何時もと変わらない日を過ごしていた

何処かに懐かしさを感じさせる旋律が流れる
心地良い旋律で気が付けば眠りに着いていた

眠りから覚めて、辺りを見渡してみる
真夜中の風景
此の地は夜は訪れないはずだと
近くに置いていたはずの古文書を探す
古文書は無く伝記さえも無い
未夜の正体を間もなく悟る
未夜とは夢だと
夢から覚めて暫くして朝を迎え
何時と変わらぬ一日が始まる

待人

 

常世の世界であの人の還りを待ち続けている
社に横たわる冷気は何時の間にか無くなり
穏やかな雰囲気に変わり果てていた

明けの朝、寒さが続く地に
焔に似た魂がそっと降り立った
祝音を齎す為、そっとある人に授ける

授受の儀式を終え、迷いは振り切れ
常世の世界から久々に現世へ降り立つ
現世に響き渡る祝音を聴き
穏やかな旋律を奏でる草原へ赴く

草原から暫くして海浜へ移りゆく
暫しの時を経て、君の姿を見掛ける
待人である君へ漸く出逢えた時
止まっていた時間が再び動き出す
永遠の節を奏で、永遠の時を過ごし続ける

秘境

師走といわれる月に秘境を探し当てる
永遠の眠りに着いたかのように瞬時に
意識は秘境のある世界へ旅立つ

架の夜では見られなかった常夏の風景が
新鮮な気分にさせてくれる
今宵より新たな地で新たな人生が始まる

赤き闇夜と青い静寂に苛まれ肩身の狭い思いを
ずっと永遠に頂き続けていたが
今宵最早それは過去の物となる

虹色に朱色に輝く時此の世での業(ごう)から
全て解き放たれ全ての自由を手に入れる

蛍雨

夏に草原で蛍を見て
蛍の魅力に酔いしれる
秋が深まる頃には姿を消したものの
また見てみたい衝動に駆られる

常夏と噂された秘境へ
旅立ち日が暮れる頃に辿り着いた

秘境では噂されていた通り
蛍の姿を見掛ける事が出来
心身共に満たされ
また精霊とも久々に語らう事が出来た

還りし時に極稀に見る雨に遭遇した
きっと最近の不条理ともいえる世界に
天も憂いているのだろう

社へ赴き行く末を憂い祈りを捧げる
社の精霊より新たな未来の創造を任された

未来は自ら創るもの
古えの頃にそう教えられ
当時は理解出来なかったが
今思えばこれが伏線かなと
社から帰りし頃に漸く気が付く

新たな未来への決意を込めた時
精霊と蛍が微笑む姿を見た
現世に戻る頃赤闇は消え
辺り一面に嘗て見た青空が
澄んだ空気と穏やかな風が
再びこの地に幸せを齎し
人々の心に平穏を取り戻していた
新たな未来が始まろうとしている
幸せな未来が訪れる事を実感した頃
自らの心にも平穏が訪れ
久々に笑顔を取り戻す